ユニクロは、卓越したマーケティング戦略を展開し、今やだれもが認める世界的ブランドとしての存在感を確立しました。
特に、ユニクロの『ターゲティング戦略』は、成功の柱と言えるでしょう。
この記事では、ユニクロのターゲット選定に対する考え方や、効果的なポジショニング方法について説明します。
また、マーケティングの基本であるSTP戦略に基づき、市場のセグメント化とブランドのポジションを明確にするアプローチについても紹介します。
ユニクロの事例を通じて、自社のビジネスにどのように応用できるかがわかる内容となっていますので、ぜひ最後までご覧ください。
ユニクロのターゲティング戦略は4つが基本
ユニクロのターゲティング戦略では、顧客の属性に限定せず、ニーズに応じた商品開発を行っています。
以下に、ユニクロの理念を紹介します。
・「MADE FOR ALL(国籍や年齢、性別、職業など、人を区別するあらゆるものを超えた、あらゆる人々のための服)」
・「LifeWear(あらゆる人の生活を、より豊かにするための服。究極の普段着)」出典:ユニクロとSDGs https://www.uniqlo.com/jp/ja/contents/sustainability/sdgs/
この理念には、次の4つの特徴があります。
【ユニクロのターゲティング戦略の特徴】
- 年齢、性別、人種で顧客特定しない
- 一過性の流行を追わない
- 自分の好きな洋服を選べる
- ほかの服とコーディネートしやすいデザイン
順番に詳しく紹介しましょう。
1:年齢、性別、人種で顧客特定しない
ユニクロのターゲティング戦略の1つ目の特徴は、年齢、性別、人種により顧客を特定しないことです。
例えば、ユニクロの代表的な商品である「ヒートテック」シリーズは、寒冷地に住む人々、オフィスで過ごすビジネスマン、さらには室内でも快適に過ごしたい主婦まで、幅広いニーズに応えます。
また、ユニクロは広告や店舗展開を通じて、多様な顧客層をターゲットにしたメッセージを発信しています。
年齢や性別を問わず、さまざまな人々がユニクロの服を楽しむ姿を描くことで、顧客は「自分もこの服を着て快適に過ごせる」と感じるようになります。
このように、ユニクロは顧客層を特定せず、幅広いニーズに応えることで、全世界的な成功を収めているのです。
2:一過性の流行を追わない
2つ目の特徴は、ユニクロは顧客のニーズにしっかりと応える一方で、一過性の流行を追わないことです。
ユニクロが提供するのは、ベーシックかつカジュアルな洋服であり、誰もが日常生活で使いやすいデザインと機能性に重点を置いています。
この背景には、長期間にわたって愛される商品を作り出し、顧客の信頼を築くという「LifeWear」の理念が反映されています。
例えば、ユニクロの「エアリズム」や「ウルトラライトダウン」はその代表例です。
これらの商品は、季節やトレンドに関係なく、常に快適さと実用性を提供し続けています。
特に「エアリズム」は、吸湿速乾性に優れた素材を使用しており、夏の暑い日だけでなく、年間を通じて快適に着用できるため、多くの人々に支持されています。
さらに、ユニクロのベーシックなデザインは、さまざまな場面で着用できるため、流行が過ぎ去っても、長く愛用されます。
シンプルなデザインのTシャツやジーンズは、世代を問わず支持されます。
ユニクロは短期間の流行に依存することなく、ブランド価値を高めることに成功しています。
3:自分の好きな洋服を選べる
3つ目の特徴は、顧客の多様なニーズに応えるために、豊富なカラーバリエーションを提供していることです。
色バリエーションが豊富であると、自分の気分に合わせたファッションを楽しめるようになります。
例えば、ユニクロの定番商品である「クルーネックTシャツ」は、シンプルなデザインでありながら、十数色以上のカラーバリエーションを展開しています。
ベーシックな白や黒から、鮮やかな赤や青まで、さまざまな色を選ぶことができ、同じアイテムでも異なる印象を演出できます。
これが、幅広い顧客層に支持される理由の一つです。
また、ユニクロは季節ごとに新しい色を追加し、顧客の関心を引き続ける工夫もしています。
例えば、秋冬には温かみのある色合いが追加され、春夏には明るく爽やかな色がラインナップに加わります。
このような多色展開により、ユニクロは一人ひとりの顧客が自分らしいスタイルを楽しむことを可能にし、幅広いニーズに応えることに成功しています。
4:ほかの服とコーディネートしやすいデザイン
4つ目の特徴は、ユニクロの服は、他ブランドと組み合わせることを望む顧客の気持ちにも応えています。
先に述べたとおり、ユニクロの商品は、シンプルでベーシックなデザインが特徴であり、他のブランドのアイテムと調和しやすいため、コーディネートの幅を広げることが可能です。
例えば、ユニクロの「スマートアンクルパンツ」は、シンプルなデザインとフィット感で、カジュアルからビジネスまで幅広く着用できます。
ユニクロのジャケットと合わせてフォーマルな印象を作ることもできますし、他の高級ブランドのトップスと組み合わせて、洗練されたカジュアルスタイルを楽しむことも可能です。
また、ユニクロの「メリノウールセーター」は、ミニマルなデザインと上質な素材により、どんなスタイルにもマッチします。
他のブランドのデニムジャケットやスニーカーと合わせることで、トレンド感のあるカジュアルコーディネートも完成するでしょう。
ユニクロのSTP戦略の特徴
さてここで、ユニクロのSTP戦略について、振り返ります。
STP戦略とは、マーケティングの基本的な枠組みであり、以下の3つの要素で構成されます。
【STP戦略】
- Segmentation(セグメンテーション):市場を異なるニーズや特性に細分化する
- Targeting(ターゲティング):最も魅力的なセグメントを選び、(そのグループに)焦点を当てる
- Positioning(ポジショニング):ターゲットに対して、自社の製品やサービスがどのような価値を提供するかを明確にし、競合と差別化する
一般的な企業は、セグメンテーションを行い、特定の顧客属性をターゲットにした商品を開発し、競合との競争で優位性を確保します。
しかし、ユニクロの場合は、顧客を属性により絞り込まず、ニーズに合わせて商品開発を行います。
ユニクロのSTP戦略の特徴は、次のとおりです。
ユニクロのSegmentation
ユニクロのセグメンテーションは、性別、年齢、職業などの属性にとらわれることなく、顧客の細かいニーズに基づいて市場を細分化します。
たとえば、「同じデザインでも色違いの洋服が欲しい」といった、顧客の細かなニーズに対応する市場を形成していくのです。
これはユニクロが自社ブランド製品を一貫して企画・製造・販売するSPA(製造小売業)であるからこそ、なせる技と言えるでしょう。
ユニクロの細かいセグメンテーション戦略を支えているのは、商品開発の機動力の高さとなります。
ユニクロのTargeting
ユニクロのターゲティング戦略は、顧客の属性に関わらず、そのニーズに基づいた商品開発を行っています。
顧客の感情に寄り添い、多様化する社会のニーズに応える商品を提供することで、幅広い層から支持を集めています。
ユニクロのPositioning
ユニクロのポジショニングは、高機能かつ高品質な洋服をシンプルなデザインで提供し、他ブランドと明確な差別化が図られています。
「ヒートテック」「エアリズム」などの革新的な素材は、快適さとスタイリッシュさを両立しながらも、手ごろな価格で提供しています。
ユニクロは、品質と価格の絶妙なバランスを追求し、誰もが気軽に着られるファッションブランドとしての地位を確立しているのです。
ユニクロのポジショニングマップを徹底分析
【主要9社アパレルブランドのポジショニングマップ】
※「UNIQLO」「ZARA」「H&M」「GAP」「Patagonia」「The North Face」「BEAMS」「United Arrows」「ワークマン Plus」のポジションニング比較
- UNIQLO:中程度の価格帯でありながら、高機能なベーシックファッションを提供するブランドとして広く認知されています。シンプルでありながら、快適性や耐久性に優れた商品を展開し、誰もが手に取りやすい価格設定をしています。UNIQLOは、品質とコストパフォーマンスのバランスを重視し、全世代にわたる幅広い顧客層に対応しているため、ファッション業界の中で確固たる地位を築いています。
- ZARAとH&M:比較的トレンド志向が強く、価格も中程度に設定されています。ZARAはファッションの最新トレンドを迅速に取り入れ、流行に敏感な顧客に向けた商品展開を行っています。H&Mも同様に、トレンドに敏感なアイテムを提供し、価格帯を抑えつつファッション性を追求しています。これらのブランドは、流行の移り変わりに迅速に対応することで、若年層を中心に人気を集めています。
- GAP:ベーシックなスタイルを中心に、中程度の価格帯で商品を展開しています。やや保守的なデザインながらも、品質と使い勝手の良さを重視し、長年にわたり安定した人気を誇ります。GAPは、クラシックなアイテムを提供することで、カジュアルファッションの定番としての地位を維持しています。
- PatagoniaとThe North Face:高めな価格でありながら、アウトドア向けのベーシックかつ高機能な商品を提供しています。耐久性や機能性を重視し、アウトドアアクティビティに最適なアイテムを展開しています。環境への配慮や高い技術力が特徴で、品質に対する投資を惜しまない姿勢が支持されています。
- BEAMSとUnited Arrows:トレンド志向が強く、価格も高めの高級ブランドとして位置付けられています。これらのブランドは、デザイン性や素材の品質にこだわり、エレガントで洗練されたアイテムを提供しています。ファッションに敏感な顧客層をターゲットにし、高価格帯のアイテムを展開しています。
- ワークマン Plus:価格が非常に安く、機能性を重視したベーシックなアイテムを提供しています。特に作業着やアウトドアアイテムに強みを持ち、実用性を重視した商品展開が特徴です。価格の安さから、幅広い顧客に支持されています。
今から実践!ユニクロに学ぶ成功法則
ユニクロに学ぶマーケティング成功法則としては、次の3つが挙げられます。
【ユニクロに学ぶ成功法則】
- シンプルさと実用性
- グローバル展開の一貫性
- データを活用した意思決定
順番に見ていきましょう。
1:シンプルさと実用性
ユニクロに学ぶ成功法則の一つ目は、シンプルさと実用性です。
ユニクロの衣服はシンプルなデザインでありながら、高機能素材を使用しています。
そして実用性を最大限に高めつつも、価格を抑えているのです。
一般的な会社も商品やサービスの設計を簡素化し、機能性に注力することで、コスト削減と顧客のニーズに応えるバランスを実現できます。
顧客満足度の向上と競争力の強化が実現できるでしょう。
2:グローバル展開の一貫性
2つ目は、グローバル展開の一貫性です。
ユニクロは、世界中で一貫した品質とサービスを提供し、地域による違いを最小限に抑えることで、どの市場でも安定したブランドイメージを維持しています。
こうした一貫性が、顧客に安心感をもたらし、ブランドの信頼性を確立する要因となっています。
一般的な企業でも、グローバル展開において一貫性を持たせることで、顧客に対して信頼感を提供できます。
同じ顧客体験を提供することで、ブランドの信頼性を高めることが可能となるでしょう。
3:データを活用した意思決定
3つ目は、データを活用した意思決定です。
ユニクロは、売上データや顧客の購買履歴を徹底的に分析し、その結果をもとに商品展開や在庫管理を行っています。
季節ごとの売れ筋データを元に、次シーズンの製品ラインを最適化し、過剰在庫の発生を防いでいます。
一般的な会社でも、この手法を取り入れることで、より効率的な事業運営が可能になります。
販売データや顧客フィードバックを定期的に分析することで、顧客のニーズに迅速に対応し、収益の最大化が実現できるでしょう。
まとめ:ユニクロのターゲティング戦略は4つが基本!
ユニクロのマーケティング戦略は、ターゲティングに特徴があります。
ターゲティングについては、『戦略ターゲットとコアターゲットの違いを理解!マーケティング力を高めるペルソナの極意』にも詳しい説明があります。あわせてお読みいただければ幸いです。
ユニクロは顧客を属性によって絞り込まず、ニーズにもとづいた商品開発を行うことで、幅広い顧客層を獲得しています。
細かなセグメンテーションに対応するためには、SPA(製造小売業)の高い機動力が重要であることがわかります。
マーケティング戦略においては、ユニクロのような特徴的なターゲティングと、STP戦略を実施することが、成功への近道です。
ユニクロにおけるマーケティング戦略における肝は、STPにおけるターゲティングが卓越していたから。
その背景には、それを支えるだけの商品開発や製造ができる資本があるということもあります。
そう考えた時に、一般的なビジネスで大切になるのは、商品・サービスからターゲット層を絞り込んでいくのではなく
購入する人であるペルソナから、課題を抽出し、それを解決するための商品・サービスのベネフィットを導きだすこと。
すなわち、マーケティングはペルソナ設定が9割です。
ペルソナが適切に設定できていれば、マーケティングは成功したようなもの。
それ以降のマーケティング活動は、ものすごく楽になり、ビジネスの成功確率も高まります。
ただ、そうは言っても、ペルソナ設定を行うってことは、難しいものです。
「ペルソナの強化書」では、ペルソナ設定をサポートする個別支援するサービスを提供しています。
個別コンサルやオンラインスクールのご案内をお送りしますので、まずはLINEに登録しておいてください。
インターネットの黎明期から20年間マーケターとして活躍
ウマ娘のサイバーエージェント出身
世界的No.1コンサルティング会社、大手保険会社、大手損保会社、大手人材系上場企業など多様な業種のクライアントに対してマーケティングナレッジを活用して課題解決に貢献する
特に、「顧客設定」=「ペルソナ設定」において独自ナレッジを活用し、クライアントビジネスを成功に導く
ペルソナ設定だけで年間1億円の利益創出
ペルソナ設定だけでM&Aでたった1年で投資回収率(ROI)15倍達成